燃え尽き症候群では、いつも活発で明るく頼れる人が突然気力を失い、退職してしまうケースがあることをご存じでしょうか。
職場にもしや・・という人がいたら、ぜひとも気づいて手を差し伸べてあげたいものですよね。
そこでこの記事では、燃え尽き症候群で退職に追い込まれてしまう原因や特徴について詳しく解説していきます。
症状やその対処法についても触れていますので、ぜひ最後までご覧ください。
燃え尽き症候群とは
厚生労働省のe-ヘルスネットによると、燃え尽き症候群=バーンアウトシンドロームとも言われ、「それまで一つの物事に没頭していた人が、心身の極度の疲労により燃え尽きたように意欲を失い、社会に適応できなくなること。」とあります。
うつ病の一種と考えられており、退職しなければならなくなるまで症状が悪化することがあります。
燃え尽き症候群の原因
人間関係における過度のストレス、不規則な時間での生活、慢性的な疲労などが蓄積し、限界を超えてしまうことで起こるとされ、息抜きやリフレッシュする方法が見いだせず、追い込まれてしまうことが原因となります。
個人要因
燃え尽き症候群で退職する人の特性として、真面目で誠実、完璧主義、頑張り屋など、他人に頼ったり、お願いしたりするのが苦手で、何でも自分で背負ってしまうことが挙げられます。
また、若年層や仕事の経験が少ない人、仕事に対する理想が高い傾向にある人が燃え尽き症候群になりやすいと言われています。
環境要因
燃え尽き症候群で退職する環境要因として、看護師や医師、教員や保育士、ソーシャルワーカーや介護士など、医療、教育、福祉に関する対人援助の職場が多いことがわかっています。
求められる仕事の質が高いことに対して、個人の自由な裁量の余地が他業種よりも少なく、ストレスがかかりやすいことが発症につながっているのです。
燃え尽き症候群の症状
燃え尽き症候群の代表的な症状は、朝起きられない、職場に行きたくない、慢性的な不安感、常にイライラする、アルコールの量が増える、遅刻や欠勤が増える、空虚感、自己嫌悪、作業の効率・能力の低下などが挙げられます。
上記のような状態になると、自身の職場環境に耐えかねて退職するケースが多くなります。
また、さらに症状が悪化した場合は、家庭崩壊、ひきこもり、自殺、犯罪、過労死や突然死につながることがあります。
情緒的消耗感
燃え尽き症候群の症状を計る指針として、MBI (Maslash Burnout Inventory)があります。
これは社会心理学者のクリスティーナ・マスラークによって考案されたもので、3つの代表的な症状によって重症度を計るものです。
①情緒的消耗感とは、顧客や同僚を思いやり、頑張りすぎてしまった結果疲れ果ててしまった状態を指します。
ここで重要なのは、身体的疲労ではなく、情緒的な疲労であるという点です。
あなたのために、という情緒的・奉仕的精神での頑張りに対して、見合った成果が得られないと虚無感やむなしさを感じてしまい、疲れ果ててしまうのです。
脱人格化
②脱人格化とは、他人への悪口や批判が増えたり、物事を他責にしたりと自分を守ろうとする作用が前面に出てくる状態を指します。
周囲を思いやり、情緒的に行動したけれど認めてもらえないと感じることで、次第に相手の人格を無視して、冷淡で割り切った言動が目立つようになってしまいます。
個人的達成感の低下
③個人的達成感の低下とは、情緒的消耗感から脱人格状態となってしまった人が、周囲との協調ができないことで生産性が落ち、自尊心・自己重要感が傷つくことで仕事にやりがいを感じられなくなることを指します。
その結果、休職や退職につながってしまうことがあるのです。
【社員】燃え尽き症候群の対処法
ここからは「自分はもしかしたら、燃え尽き症候群では・・?」と感じた場合、どのような対処法があるのかを解説します。
自分にはこれが合いそうかなという気づきがあった場合は、退職を決意する前に下記を参考に実践してみて下さい。
優先順位をつける
燃え尽き症候群で退職してしまう人は、第一に「忙しさ」を訴えます。
濁流のように押し寄せる大量の業務・タスクに押し潰されてしまうのです。
このような場合、優先順位をつける方法があります。
仕事を片っ端から片付けるのではなく、緊急かつ重要なものから始め、次に重要だが緊急でないもの、緊急だが重要でないものの順に分けるのです。
重要でも緊急でもないものは最後、時間に余裕ができたときのみ実施する、といった具合です。
こうすることで闇雲に動き回り消耗することを防ぐことができます。
完璧主義をやめる
燃え尽き症候群で退職してしまう人は、大小差はあれど完璧主義である場合が多いとされています。
他人に対してよりも自分に厳しい性質のため、高い理想と現実の狭間で思い悩み、ストレスを抱え込んでしまうのです。
そこで、「自分は完璧主義なのではないか?」と自問することで、自分自身の思いグセを認識することができ、少しづつストレスを軽減することができます。
他人を頼る
燃え尽き症候群で退職してしまう人は、他人に頼るのが苦手です。
人一倍責任感が強いために、他人に負担をかけるような勝手な人になりたくない、と考えるためです。
しかし会社など組織で働く場合、個人で捌ける仕事には限界があります。
周囲からのサポートが少ない中で起こりやすいのが燃え尽き症候群ですので、まずは自分を否定しない人に、小さなことから少しづつ頼むクセをつけてみましょう。
そうすることで精神的、体力的ともに限界に至るのを防ぐことができます。
仕事を整理する
退職にまで追い込まれる燃え尽き症候群には、雑然とした仕事が次々に舞い込んでくる職場環境があります。
職場に明確な分担がなかったり、責任の所在が不明確だったりする場合、自分の本来の仕事ではないのに・・と感じながら行うものは大きなストレス源になります。
また、休日出勤などが増えると、業務とプライベートの境界線がなくなってしまい過重な負担となってしまいます。
このように休日とプライベート、自分の仕事と他人の仕事をしっかりと整理することで、ストレスをコントロールすることができます。
相談する
燃え尽き症候群にかかったときは、職場の上司や人事・総務、産業医、メンタルヘルスの専門家などが主な相談窓口となります。
また、自分の気持ちをありのまま上司に相談することは非常に重要です。
職場のメンバーに、自分は現在苦しんでいて、支えが必要なのだと知ってもらうためです。
普段感じていることや悩みを恐れずに声に出して訴えましょう。
そうすることで職場に理解が広がり、退職に追い込まれることをせずにすむかもしれません。
それがチームや会社にとっても最善だからです。
趣味に時間を使う
責任感が強い人は、リフレッシュのための時間や、息抜きのための余暇を無駄なものとしてとらえがちです。
このようなタイプの人は、ひたすら頑張り続け、仕事漬けの日々の果てに気が付くと動けなくなくなってしまっていたということがあります。
人生において、趣味や好きなことをして過ごす時間は大切なものです。
遊びの中で仕事に応用できるエッセンスを得ることは珍しくありません。
趣味に時間を使うことで、日々を充足感で満たすようにしてみましょう。
休養をとる
「つらい、退職しよう・・」と判断する前に、ぜひ試してほしい対処法が休養をとることです。
燃え尽き症候群を発症すると、人間不信に陥ってしまい、自分が休んだときみんな怒っているだろう、居なくて喜んでいるのではないかというように、職場に対して皮肉な印象を持ってしまうことがあります。
ところがそのような時、職場のメンバーは一様に心配してくれるものです。
人は誰でもお互い様であり、持ちつ持たれつです。深く傷つき思い悩む可能性は、誰にでもあるのです。
なんでも悪くとらえてしまう、常にネガティブな考えばかりが浮かんでしまうという時は、しっかりと休養をとることで自分と向き合い、自分自身を知る時間をつくりましょう。
転職する
燃え尽き症候群になってしまったら、今の職業を退職して転職するという方法もあります。
燃え尽き症候群を成長のチャンスとしてとらえる発想です。
例えば、かつて時間や経済的な理由から現在の仕事を選んだが、学生の時はデザインを勉強しておりデザイナーとして働きたいと思っていた、といった具合です。
今の仕事に満足できなくなったのなら、まったく別の分野へと視野を広げ、新しい可能性を模索するのも良い方法でしょう。
【会社】燃え尽き症候群の対処法
会社は、従業員のメンタルヘルスを常に気を配り、燃え尽き症候群で退職する人員を未然に防ぐことが重要です。
ここからは、会社側から見た燃え尽き症候群の対処法を解説していきます。
職場復帰の支援
燃え尽き症候群で休職した従業員の復職について、会社は安心して復帰ができるように支援する必要があります。
具体的には、負担の少ない業務から復帰してもらう、業務内容を見直す、部署異動を行うなど、症状の再発しないよう対策をします。
職場復帰した従業員は、以前のように働けるのか、また体調を崩したりしないかなど、不安を抱えているものです。
会社側は、従業員のメンタルヘルスを意識した支援を行うようにしましょう。
試し出勤制度
最近では、厚生労働省も推奨している、段階的に復帰してもらう制度「試し出勤制度」を導入する企業があります。
試し出勤制度は、休職者の職場復帰に対する不安を和らげ、休職者本人が段階的に自分の状態を確認しながら、職場復帰の準備を行えるようにする制度です。
またこの制度には、勤務時間に自宅以外の場所で過ごす模擬出勤や、自宅から職場近くまで通勤して一定時間を過ごす通勤訓練、職場に行き仕事をせずに様子を見る試し出勤があります。
いずれの制度も、会社が自主的に設定する制度であり、法律で定められているものではありませんが、会社は自社に適した制度を選び、従業員のケアに努めることが求められます。
復帰後の配慮
燃え尽き症候群からの復帰ができれば、次は再発させないための復帰後の配慮が必要です。
個人要因の場合は、職場の対人関係において、情緒的に消耗しにくく、ストレスが蓄積しないようにするための配置換えや人的配慮が求められます。
環境要因の場合は、業務自体を改善しなければなりません。
出退勤や残業管理、業務の具体的な内容の見直しなどを行い、ほかの従業員にとっても有益となるよう努めるべきです。
このように、会社は休職者のMBIにおける要因に合わせて、対策に取り組む必要があります。
相談できる環境の用意
会社は、燃え尽き症候群にかかった人の相談窓口を明確化する必要があります。
一般的には総務や人事、産業医などがこれに該当します。
担当者や担当部署があやふやだと、メンタルが打撃を受けている人にさらなる負担をかけることになってしまいます。
従業員が相談できる環境の用意は、退職へ追い込むことを防ぐ意味でも大変重要なことです。
1on1の導入
燃え尽き症候群に対する有効な対処法として、1on1があります。
これは職場の上司へ悩みを全て打ち明けられる状態を作り、最適な業務量や目標を調整していくことを指します。
ただ実際の1on1の導入では、オープンに話せる状態でない、些細な兆候だけでは声掛けが難しいなどの問題があるため、会社は実施に伴い効果的なステップを踏んでいけるよう双方へ指導、サポートをする必要があります。
燃え尽き症候群につながる職場
燃え尽き症候群につながる職場には、共通の特徴があります。
この環境要因を取り除けなければ、ストレスによる休職者や退職者は増え続けてしまう可能性が高いと言えます。
ここからは、そのような職場の特徴と注意すべき点を解説していきます。
仕事量が多い
とにかく仕事量が多い、忙しいといったことは、燃え尽き症候群によって退職した人からよく聞く言葉です。
次から次へと仕事が舞い込み、息つく暇がない。常に急かされているようにタスクがやってくると、人は大きなストレスを感じます。
正当な評価がされない
仕事量や成果に対して、正当な評価がされないことは大きなストレス源となります。
従業員自身が努力しているのに評価されていないと感じてしまうと、業務へのモチベーションを保つことは難しいでしょう。
残業や休日出勤が多い
残業や休日出勤が多い職場は、燃え尽き症候群による退職者を増やします。
自分が残業や休日出勤すればいい、と考える人がそれに該当します。
会社の残業時間管理がずさんで、終わりが見えない業務を会社が黙認している状態は、あってはならないことです。
ワークライフバランスが悪い
ワークライフバランス(WLB)とは、仕事の時間と私生活の時間を調和させ、2つを対立させずに両立させることを指します。
燃え尽き症候群によって退職に追い込まれる場合、このワークライフバランスが大きく崩れてしまうことがあります。
例えば、毎日業務時間内に終えることができる範囲を超えた仕事量を与えられ、残業を余儀なくされる、休日出勤を強制されるといった具合です。
ワークライフバランスが悪いことは、従業員の幸福感を奪ってしまうことになるのです。
サービス残業が多い
長時間労働が続き、残業が日常化している職場は、勤怠の管理がずさんでサービス残業を黙認するケースが存在します。
サービス残業が多い、またそれを会社が黙認しているということは、従業員の働く意欲を奪う環境であるとともに、明らかな違法行為です。
労働の強要ともいうべきサービス残業は、退職につながる燃え尽き症候群にとって大きな要因となる習慣なのです。
裁量がない
求められる仕事の質が高いのに対して、裁量がない、都度確認と相談を必要とする職種は、ストレスを蓄積しやすいと言われています。
例えば看護師や介護士、ソーシャルワーカー、教師などのヒューマンサービス業です。
これらは燃え尽き症候群による退職者が多くなる傾向があります。
仕事内容と給料が見合わない
仕事内容と給料が見合わない職場は、燃え尽き症候群となる要因のひとつです。
努力に対する成果が得られない環境では、モチベーションを維持して働き続けることは困難です。
仕事量に見合った給料は支払われるべきものですが、改善されることがないまま退職へと追いやってしまうことがあるのです。
燃え尽き症候群になりやすい人の特徴
燃え尽き症候群には、発症しやすい性格・特徴があります。
ここからは、それぞれの特徴について解説します。
没頭しやすい
いつもエネルギーに満ちていて、やる気満々で仕事に没頭しやすい性質は、燃え尽き症候群を発症しやすい特徴と言われています。
責任感が強い
使命感や責任感が強いタイプの人は、自分に厳しく内省する性質を持っています。
こうした人は、ふとしたきっかけで糸が切れるように燃え尽き症候群を発症し、退職してしまうことがあります。
成長意欲が強い
成長意欲が強い、モチベーションの高いタイプは、頑張りすぎて力尽きてしまうことで燃え尽き症候群を発症する可能性があります。
高い理想を掲げて努力し続けても、思うような成果が出ない。
そうした日々に一瞬トラブルが発生すると、張りつめていた糸が切れるように意欲を失い、退職してしまうことがあります。
完璧主義
完璧主義で妥協できない人は、自分を追い詰めて仕事を完璧に仕上げようとする傾向があります。
しかしその結果、小さな挫折から修正ができずに燃え尽き症候群となって退職してしまうのです。
燃え尽き症候群になりやすい職業
燃え尽き症候群になりやすい職業は、人に寄り添ういわゆるヒューマンサービス職と言われる職業です。
具体的には看護師、医師、介護士、ソーシャルワーカー、教師など対人援助職をはじめ、近年では営業職や販売員、コールセンター職員など、人と接する職業で燃え尽き症候群になる人が増えています。
燃え尽き症候群の時に考えること
燃え尽き症候群になってしまったとき、退職する前にまず自身の症状を明確に把握することが必要です。
「自分は病気ではない」と自己診断を行いがちですが、ここでは医師への相談が適切です。
そのあとは無理をせず、時間をかけて休息を摂るようにしましょう。平静を取り戻し、心身ともに回復する兆しが見えたら、自身の今後について考えてみてください。
キャリアプランについて考える
燃え尽き症候群になって退職したとしても、それは長い人生の中の一幕にすぎません。
その経験がきっかけとなって、新たな道、職業に踏み出すことができることがあるのです。
様々な事情から現在の職業についていたとしたら、過去に興味があったこと、やらずにいたことなどを思い出してみてください。
自分自身を見つめなおしたとき、新しいキャリアプランを思い付くかもしれません。
自分の人生を優先する
燃え尽き症候群になりやすい人は、周りに気を使いすぎている傾向があります。
相手の気持ちを優先するあまり、過剰な気配りや自己抑制が慢性的なストレスを招くのです。
特に人をケアする職種には正解がないため、努力に見合った評価が得られず、さらにこの傾向が強くなります。
満たされた人でなければ、他人を満たすことはできないのです。自らを退職に追い込む前に、まずは自分の人生を優先しましょう。
燃え尽き症候群の退職まとめ
ここまで燃え尽き症候群の特徴や対策、退職してしまうケースを中心にお伝えしてきました。
ここまでの記事のポイントをおさらいすると以下の通りです。
燃え尽き症候群の退職は、医療や介護、教育などの対人援助職を中心とした人とかかわる職業に多い。
燃え尽き症候群で退職する人の主な症状は、朝起きられない、職場に行きたくない、慢性的な不安感、常にイライラする、アルコールの量が増える、遅刻や欠勤が増える、空虚感、自己嫌悪、作業の効率・能力の低下などがあり、悪化すると家庭崩壊、ひきこもり、自殺、犯罪、過労死や突然死につながることがある。
燃え尽き症候群の退職者が多い職場は、仕事量が多い、正当な評価がされない、残業や休日出勤が多い、ワークライフバランスが悪い、サービス残業が多い、裁量がない、仕事と給料が見合わない、といった特徴がある。
燃え尽き症候群で退職をする前に、自分の人生を見つめなおし、キャリアプランを考えるのは有効である。
これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。